医療データベース研究⑤(全体考察・オプション解析①)
-
医療データベース自主研究報告続きです。
本稿では【全体考察とオプション解析①】について報告します。(前回まで)
医療データベース研究①(データベース)
医療データベース研究②(研究の概要)
医療データベース研究③(結果報告:尿路感染)
医療データベース研究④(結果報告:上気道感染)【全体考察】
【尿路感染について】
SGLT2阻害薬と他の薬剤との発現率の差が確認されました。
男性よりも女性の方が2倍以上発現率が高いことが確認されています。
また、糖尿病重症患者(合併症)の発現率が高くなることも確認されています。以上より、合併症別に発現率を調査することを次ステップのクエスチョンに入れることとしました。
【上気道感染について】
糖尿病治療薬の種類の違いによる発現率の差は見られませんでした。
ベースの発現率が高く、薬剤間の比較が難しくなっている可能性がありました。
そのため、観察期間を24か月から6か月間として追加解析を行いましたが、
薬剤間での違いは見られませんでした。以上より、今後、季節性も考慮した解析ができるとよいかもしれないと考えています。
ただ、実際にはただの風邪・花粉症など多くの類症状との区別が難しいのでは?ということや
より少ない件数での検証になるので有意差なんて言えないのでは?という悲観的な予感もあったりします。
”やってみてみないとわからない”としか言えないのですが、やってみるまでのインセンティブが低いと
正直言わざるをえません。ちなみにですが、
上気道感染と診断された件数の推移も調査してみました。
全期間の2005年1月から2017年4月までです。
右図に参考用にアップします。
やはり時期(特に冬期の寒い時)には数値が上がっています。この期間を考慮することで、普通の風邪を除いた解析が出来るのではないかと推測されます。
グラフの”山”を観るだけだとそんな気はしますが。。。【オプション解析①】
今回、オプション的な解析として以下の2つを実施しました。①院外処方データベースとの比較(JMDC:JMIRIデータベース)
②自発報告データベースとの比較(各副作用のシグナル検出の比較)本稿では、①を先に報告します。
【JMIRIデータについて】
”JMIRIデータ”とはJMIRIとは、株式会社医療情報総合研究所(Japan Medical Information Research Institute,Inc.)という企業を指し、
”JMIRIデータ”とは上記企業が提供する「院外処方薬局の処方情報をデータベース化した」医療情報データを意味します。当ブログでの公開可能リミットもあるので、手元にある数値データは明かせませんが、
”日本全国を解析するにあたって十分相当のカバー率、処方数、患者数、契約店舗数(薬局)”を誇っています。(担当営業の口頭による説明から)このあたり、数値データ等についてはJMIRIへ直接お問合わせください。
右図に両データの比較をしたものをアップします。
全体・65歳未満・65歳以上の層別でその割合を比較しています。どの層も似た様な割合を示していますが、
特に
65歳未満のパイチャートでは、同じような構成であることが分かります。
(患者数が異なるところも参照ください)オプション解析①まとめ
データ分布の実態について比較、確認できました。
このことから、JMDCのレセプトデータと、JMIRIの調剤薬局データにおいては、
ともに65歳未満においては同じような患者データ(割合)を有することがわかります。
一方、高齢者層(65歳以上)の薬剤比率が異なる点についても確認ができ、
このことは、臨床現場における糖尿病ガイドライン(慎重投与の影響)によるものかと考察されます。結果として、糖尿病薬4薬剤の単剤比較を行った今回のDB研究には、
高齢者層のデータとしてもJMDCが適していたことが確認できました。ただし、
JMIRIデータ(調剤薬局データ)では診断名が入っていないため、このデータ単独では解析に限界があります。
医療データベースについての説明はコチラからとはいえ、この傾向が分かっただけでも別解析時にプラスの観察眼を期待できるかと思います。
次回はオプション解析②として有害事象自発報告データベースを対象とした解析結果を報告します。
-
お問合わせ
メルマガ登録