オーダー機能について②
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前稿に続いて、本稿では解析例を投稿します。
(目的)
オーダー機能を活用してPTを複数まとめて解析する。先日PMDAからのメールで「医薬品リスク管理計画(RMP)掲載のお知らせ」を受け取りました。
新たに公表されたRMPについてのお知らせです。
その中からピックアップして解析例を下記します。薬剤
一般名:レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール
月経困難治療剤です。RMPには
”重要な潜在的リスト”として「乳癌」が記載されています。ここでCzeekVで「レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール」を
検索してみて乳癌の報告を確認してみます。
FAERSの詳細情報で「乳癌」と絞り込むと、副作用の列には
「乳癌」以外にも「女性乳癌」「乳癌第1期」「浸潤性乳癌」「再発乳癌」等があります。
それぞれのスコア値は下図のようになっており、シグナルは検知していません。乳癌と女性乳癌が別々となっており、どう違いがあるのかが分かりづらいところです。
ステージも4種類にわかれています。添付文書にも記載がないようなこの副作用ですが、(※慎重投与の欄には乳癌既往歴患者が記載有り)
例えばCzeekV上では、どの副作用を定期的にウォッチするのがよいのかが分かりづらいところです。
今の所シグナルも検出はしていませんし。。。。※慎重投与には乳癌再発のおそれが記載されています。
[エストロゲン投与と乳癌発生との因果関係についてその関連性を示唆する報告もあるので、定期的に乳房検診を行うなど慎重に投与すること。]
その他の注意に
外国での疫学調査の結果、経口避妊薬の服用により乳癌及び子宮頸癌になる可能性が高くなるとの報告がある。との記載があります。一方で、JADERにおいては、乳癌が5件報告あり、閾値も超えています。
JADERでの検索結果を下図に記します。わずか5件ですが報告があり、しかもシグナル検知(しきい値を超えています)の対象です。
●FAERSでは検知なしで、JADERでは検知ありと、DB間で異なる。
●乳癌に関わる医学用語が複数あり、どれを検知対象とすべきか迷うといったような課題への対応が求められます。
そこで、
副作用用語のグルーピングでの解析を実施します。
有害事象報告のデータベースにはMedDRAの医学用語が用いられていることは
こちらの投稿で説明しました。MedDRAは階層構造となっており、有害事象報告DBに記載があるPT用語には上位階層があります。
それらをまとめて解析することが出来ます。
例えば「乳癌」は直上階層の「悪性乳房および乳頭新生物」というグループに所属します。
詳細を記載すれば他の階層にも所属したりします。
また、この直上階層の「悪性乳房および乳頭新生物」直下には「女性乳癌」「乳癌第1期」等が含まれます。
つまり、まとめて解析とは、「乳癌」(PT)直上階層(HLT)の直下にあるPTをすべて対象とするということです。分割表でイメージすると下図です。
これらをCzeekVのオーダー機能で記載する例を下記します。
①
DB:FAERS
薬剤:レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール(一般名)
有害事象:「乳癌」が所属する直上階層に属するPTすべて もしくは
「悪性乳房および乳頭新生物」直下のPTすべて
その他:特になし
目的:研究また、
MedDRAにはSMQといわれるグルーピングもあります。
https://czeek.com/jissen/terminology/
このSMQも活用してみて解析をしてみたいとおもいます。そこで、下記
②
DB:FAERS
薬剤:レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール(一般名)
有害事象:SMQで「乳癌」(PT)が属する同階層のPTすべて(狭域) もしくは
SMQで「悪性乳房腫瘍」に属するPTすべて(狭域)
その他:特になし
目的:研究実際のオーダー画面は下図が参考例となります。
オーダー後、計算が終了すれば
計算結果を閲覧できるようになります。
オーダーアーカイブから確認します。
すると下図のような結果を得られます。今回はSOCの階層とSMQの比較をすることが目的ではなく、
それらのグルーピングを用いてカウントをしてみることが目的でしたので、
①と②の間での結果比較はしません。
対象PT範囲の違いからカウント値が若干異なりますが
どちらも単独PTだけで確認するよりは、カウント値が低すぎて判断につながらないという懸念からは
逃れられそうです。
(他の懸念もありそうですが、ここでは割愛します。)シグナルもPRR(かつカイ二乗)・RORを見てもしきい値は超えていません。
FAERSデータではシグナル検知はしていません。継続的なモニタリングは必要かと思いますが、現状リスクが高いとも言えません。
では、JADERではどうでしょうか?
という”次なる知りたいこと”、”トライにむけての疑問”も出てくるかと思いますが、それは本稿では扱いません。
是非、オーダーをしてみて結果を閲覧してみてください。あるいは既にオーダーアーカイブにあるかもしれません。
ユーザーのみ確認が可能です。こうしてみると、薬剤の特性や副作用用語によっては、
ひとつだけのPTに注視していても探索にはあまり貢献せず、(一つのPTだけの増状況を定期監視等)
関連性のあるPTも広く注目して探索を進めることのほうが、シグナルディテクション(探索)と言えそうです。今回は”乳癌”に関連しそうなPTをまとめて解析することで
より薬剤疫学的な視点での調査を実施しました。また、通常の症例チェックという視点でも、
レポート一覧や、各症例のひとつひとつの確認もできるので、
どのような症例に対して用いられて、副作用としてどのようなものが(乳癌以外に)出ているのかを
確認も進められます。
例えばホルモン補充療法や、閉経期症状への投与なども確認ができました。ちなみに配合剤ではなく、
「レボノルゲストレル」でチェックをしてみると
CzeekVにおいては、詳細情報をみるだけでも多くの乳癌を含む副作用がシグナル検知をしています。対象としている薬剤だけでなく、
類薬・同種同効薬・同成分を含むものなども観察対象とする、シグナルも件数もおっかけてみる。
また、MedDRA用語における一つだけのPTではなく、
階層を活用したスコープの設定など、シグナルディテクションとして出来そうなことは
まだまだ有りそうです。
これらを踏まえて、シグナル評価(evaluation)へとつなげていくことが
ファーマコビジランス活動の一つと考えられます。(参考文献)
The New England Journal of Medicine
December 2017,377, Contemporary Hormonal Contraception and the Risk of Breast Cancer
経口避妊薬服用における浸潤性乳癌の関連評価タグ: -
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