海外先行事例の調査方法
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「検索結果は0件でした」
ニュースで気になった薬剤を検索してみても、結果をみると0件だったから、まだ安全性報告として有害事象は出てないですね。
というコメントをいただいたことがあります。
また、同様に、発売間もない薬剤について調査をしてみた、というケースにおいて、
海外先行発売のものでも、やっぱりまだ報告例がないですね。
という感想を頂くこともあります。
実際に検索をしてみます
ニュースを見て、気になった薬剤ということなので、
各企業のオウンドメディアや、薬に関するポータルサイトなどで報道されている薬剤かと推察します。ということで、
最近各種ニュースサイトで取り上げられていた下記薬剤を検索してみます。検索薬剤:アルツハイマー病(AD)治療薬候補 アデュカヌマブ
2020年7月8日、バイオジェンによる米国食品医薬品局(FDA)へのBiologics License Application(BLA:生物製剤ライセンス申請)の提出が完了した薬剤です。
2017年10月より、バイオジェンとエーザイ株式会社によって全世界的に開発ならびに製品化を共同で実施されています。日本語での検索結果は確かに0件でした
検索をしてみると、上図のような結果となりました。
最新データで検索をしたキャプチャーです。
確かに0件表示でした。日本発売間もない薬剤でも同様なのでしょうか?
下記薬剤について、検索してみました。対象薬剤:非定型抗精神病薬 ラツーダ®錠
承認日:2020年3月25日
薬価収載日:2020年5月20日
ニュースリリース日:2020年6月4日(大日本住友製薬会社ニュースリリースより)英語で検索してみると…
答えを先に言ってしまいます。
日本語登録が追いついていないので『英語名』で検索をしてみてください。
英語で検索してみるとどんな結果でしょうか?
アデュカヌマブは”Aducanumab”で、
ラツーダは”Latuda”で検索をしてみます。上図のように検索結果を見るとFARESで報告があります。
(JADERではありません。0件でした。)アデュカヌマブは”Aducanumab”で、検索すると35件
ラツーダは”Latuda”で検索すると12,488件も症例報告がありました。日本語検索だけだと見逃すところでした。
登録が追いついていない、というのはどういうことか
JADERでは0件です。
今回、検索をしたJADERのバージョンは、2020年5月公開で、6月末にCzeekVに搭載したものです。
JADERの2020年5月公開は1月報告分までが搭載されているものとなります。ということで、6月発売のラツーダ®錠については発売前のデータバージョンということで
症例報告としては載っていなかった、ということが考えられます。
・・・これが「登録が追いついていない」という一つの内容です。国内では発売前であっても海外ではすでに販売されており、多くの患者さんに投与後、
有害事象報告としても報告・登録されていれば、FAERSにおける「ラツーダ®錠」のように多くの
副作用症例を検索し参考とすることが出来ます。
また、FAERSにおいては治験時の情報も収載されています。
ですので、国内外とも未発売だとしても、治験における有害事象情報がいち早く上がっていれば
症例報告は登録されていて、検索可能です。英語-日本語翻訳
ただし、FAERSは全て英語で作られている医療データベースです。
日本語で検索できるようになっているのは、CzeekVのシステム内で「英語と日本語を結びつけているから」です。
この結びつきには公開となっている添付文書などの情報をもとに作成される薬剤マスタを活用しています。日本未発売(や、承認前等)の段階では、正式な日本語名がまだ無い(オープンになっていない)状態のものもあります。
製薬企業が薬の日本語名(カタカナ等で公開される薬剤名)をニュースリリース等で情報提供するときには、
正式な日本語としてオフィシャルなものとは思いますが、
承認を経て、薬価収載となり、ベンダーが開発する薬剤マスターに登録されて初めて
英語ー日本語が結びつくことになります。
オウンドメディアやニュースサイトで見られる速報とのギャップがこのプロセスによって生じています。
・・・これが「登録が追いついていない」というもう一つの内容です。レポート一覧(Aducanumab)を見てみると…
上図はアデュカヌマブを検索したときのレポート一覧です。
症例報告レポート35件の一部となります。
この35件を「日本国」だけに絞り込むと 16件 がヒットします。つまり、16件の症例報告レポートが日本からFDAへ報告されており、
”JADERでは検索できない(JADERには登録されていない)”有害事象情報を
FAERSデータでは確認することができるようになっています。この16件ですが、いつかはJADERにも登録されて閲覧できるかもしれませんが、
必要としたタイミングで確認することができるという意味では
FAERSを活用することには大きな意味があるかと思われます。まとめ
◆日本語で検索しても結果がでない薬剤は英語でも検索してみましょう。
FAERSでの症例報告レポートの登録があるかもしれません。◆英語の綴りを探す時はオウンドメディア(各製薬企業ニュースリリース)や
KEGGを活用することをお薦めします。◆症例レポート一覧で”報告国:日本”を見ることが出来ます。
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