DB研究 自主研究③
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DB 研究 自主研究に関しての続きの投稿となります。
前回までの投稿については
「DB研究 自主研究①」
「DB研究 自主研究②」
を参考ください。
発表場所・演題、研究手法、観察期間の設定・結果に関する考察について記述しています。本稿では、本研究の延長上として、補足で進めてみた研究を報告します。
自発報告データを用いた解析
対象とするデータベースにSRSを用いて、これまでの研究報告同様、
単独剤としてのSGLT2阻害薬治療群と、併用処方であるSTLT2阻害薬(と、DPP4阻害薬もしくはBG薬、SU剤)治療群を
比較検討するとどのような結果が出るのかを調査しました。=対象DB=
FAERS:1997年第4期~2019年第1期
JADER:2019年7月公開版(2019年3月)=有害事象=
有害事象である尿路感染には以下のPTタームを割り当てています。(MedDRA ve.r22.0)
=シグナルディテクション=
(Signal detection)
PRR・ROR・IC・EBGMを利用しました。
シグナルディテクションについては先行研究である下記を参照しました。
『(1) Int J Med Sci. 2013;10(7):796–803.』
また、探索にはCzeekV®を活用しています。簡単に検索できます!結果
はじめに統計情報です。
各群の全体に対する尿路感染症の数値がどれほどかを上のテーブルに記述しています。次にFAERSにおける解析です。
Table.3では、単独薬での有害事象と各シグナル検知を見ています。
黄色となっているところが、いずれかのスコア値がシグナル検知をしているものとなります。
Nが症例レポート件数なので、症例数が少ないものだけが未検知ですが、ほかは検知しています。Table.4では、併用薬です。
単独薬同様、Nが少ないもの以外は検知しています。JADERでは下記のようになりました。
Table5.では単独薬、Table6.では併用薬です。症例レポート数やレポート報告比率は、
FAERS:単独薬>併用薬
JADER:単独薬<併用薬
と、DB間でレポートの割合が異なる結果となりましたが、
自発報告なので処方分母数が不明でこれだけでは何とも言えません。
SGLT2阻害薬の海外での使われ方、日本での使われ方というバイアスもあります。
痩せ薬的に用いられているケースもあるようです。テーブルの通り、シグナルディテクションについては差はありません。
もともと重症度の高い患者向けに投与されるケースが多いため、
併用薬処方においてはより重症な症状についての報告が多い可能性もありえます。
さらなる解析が必要ではないかと考えます。
一方、JADERでは症例報告数が少ないため結論を導くことは難しいです。DBゆえのLimitationがどうしても存在ます。
まとめ
観察期間についてより目的にかなうための設定(look back period)を考慮しました。
他細かい設定もありますが、概ねこれまでの研究経験値もありスムーズにいったかと思います。
解析のためのプログラムもツール化しながら手元に活用ライブラリも増えていきましたので、手間もかからずに開発できました。ちなみに統計解析ソフトはRを使っています。
社内SASユーザが多いですが、Rもバリバリ使っています。
Python含めてどのソフトがどんな特徴があるのか、
どんな目的でどちらを使うのかなど、SLACK上でコメントが日々飛び交っています。学会当日の発表はスポットライトポスタープレゼンテーションということで、
発表者の前にオーディエンスがいる形式での発表でした。(30名程)割り当てられた時間で司会者進行のもと発表しましたが、質問はあまりなかったです。
海外の方にJMDCデータをよく理解してもらえなかったのか、
言語の壁があったのか、活発な質疑応答というよりは
滞りなく発表が続けられたという印象でした。(発表者感想より)短いスポットライトタイムではなく、定められた時間内に立っているときのほうが
周りを気にせずにコミュニケーションがとれるのかもしれません。実は学会当日は補足のSRS解析を発表内容に含めませんでした。
というのも、
結果を示したとおり、差異がなかったのもそうですが、
異なるデータの結果を出すのも唐突すぎるのと、
JADERでの症例数が少ないことで議論できる情報にまで至らず、
研究テーマや発表内容のシンプル化を優先して割愛することにしました。海外では皆さんSRSについてどのような印象をお持ちであるのか気になったのですが。
本研究を通じて
その薬剤がどのように使われるのかといった臨床現場視点での情報も検討すること、
そうした薬剤の特性だけでなく、対象症例・アウトカムの定義、投与日・発現日などなど、
データの特性も含めて研究デザインはこれからも日々検討を続けていく必要性を感じました。 -
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