統計学的検定法 比較の比率
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本稿では、前向き研究と後ろ向き研究について説明します。
前向き研究・コホート研究
英語でProspective studyと言われる前向き研究では対象として2群を選びカウントします。
カウントした群における罹患率を比較します。
調査は対象設定後、”未来に向かった”追跡調査となります。例ですが、肺癌と喫煙との関係性調査の例を右図の分割表にあげています。
この分割表において相対危険度(RR:relative risk)を計算できます。
この相対危険度(RR)は関連の強さを表現しますので
高いほどおきやすいことになります。
また、95%CI(信頼区間)を求めることで、差があるかどうかがわかります。後ろ向き研究・ケースコントロール研究
英語でcase-control study, retrospective study とも言います。
上記同様対象として2群を設定します。
一方は研究対象となる条件を有する(罹患等)ものでケースの対象群、もう一方は、条件を有しないコントロールの群に相当します。
危険因子の曝露について”時間を遡って”比較を行います。上記同様に肺癌と喫煙の関係性の調査研究を右図にあげています。
ケースコントロール研究では
オッズ比(OR:odds ratio)を用いて関連性を求めます。
ORが1より大きいと
「曝露群のほうが非暴露群よりもリスクが大きい」といえます。※ケースコントロールにおいては、RR(相対危険度)は用いません。
まとめ1(上記比率の比較スキームのまとめ)
(右図は実際に報告された研究例ではなく、数値は適当に入力しています。)
RRやOR以外に寄与危険度(AR:atrributable risk)、寄与危険割合(PAR:percent attributable risk)を求めて解釈に役立てることもあります。
寄与危険度は「その曝露を除去することでどれだけ予防できるか?」の指標とも言えます。
寄与危険割合はリスクを有する(喫煙)群における罹患者(肺癌)のうち、どのぐらいの割合でそのリスク要因が影響しているのかと考える割合になります。参考
比率の比較を行う研究では、細かく分けると他に横断研究と実験研究があります。
実験研究には二重盲検前向き(ランダム化)研究のように
介入時に患者も医療従事者も治療内容を選択できない手法もあります。
Fisherの正確検定・カイ二乗検定等に代表されるスキームが異なる検定法もあります。ほか
・P値によってCIを補間することができるケースもあります。
・副作用発現必要症例数(NNH)を求め薬剤投与何人のうち1人が発生する可能性があることを求める手法を
Laupacisら(1998)が研究報告しています。まとめ2(本稿のまとめ)
・コホート研究では相対危険度(RR)を求めることでリスク比を明らかにします。
・ケースコントロール研究ではオッズ比(OR)を求めることでリスク比を明らかにします。
・寄与危険度は比較群の比率の差を計算します。
・寄与危険割合は罹患原因の探索に用います。2×2の分割表を用いる手法は基本となり広く応用可能ですので、
RR・OR等を名称含めて理解、記憶することは重要です。
比率の比較の統計学的検定法を用いた研究報告は医学研究・疫学研究でも割合が多いです。対象とするデータベース、症例により手法も様々ですが、基礎を抑えておけば他の手法も理解がたやすくなります。
ただし、各研究におけるメリット・デメリット、注意事項(前提条件や、バイアスの問題など)は十分吟味のうえ研究を行うことが重要です。
本稿では、統計学的スキームにフォーカスして説明しました。
実際に研究を進めるにあたっての注意事項は別途諸文献を参考ください。 -
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