既報/未報(既知/未知)機能 について①
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既報/未報(既知/未知)機能は、
実は数年前から追加されていたのですが、活用はされていますでしょうか?名称も「既報/未報」とするか、「既知/未知」とするか、
散々迷った挙げ句、マニュアル上は前者に定義しつつも、口頭の説明時には後者を言ってしまうという
何とも担当者泣かせな機能でもあります。
感覚的には「既知/未知」と聞いたほうが理解して頂きやすいのではないかと思うところもありますが、
自発報告(SRS)というデータを搭載した本システムに、より合った表現を最終的には選択しました。そして、本機能を理解してもらうための説明もまた難しく、
何度も説明トークをリバイズするというこれまた営業泣かせな機能でもあります。本稿では、本機能について説明致します。
詳細ページテーブルにあります。
■開発背景
くすりの安全性情報を話題として医療従事者の方とお話をしていると、
多くの方が添付文書や(製薬企業・卸からの)提供資材に頼りっきりで、
どうしても必要がある場合にのみ電話で問合せをするという状況であることをお聞きします。その中で、エビデンスある情報をもとにどれだけ判断できているかや、
自身の判断にエビデンスをどれだけ活用できているのか、となると、
添付文書・書籍を中心とした資材記載の情報活用がメインで、
時間があるときに論文を検索してみる、いうのが実情であるようです。
特に論文検索はその情報取得の重要性を認識しつつも
本当に活用可能な情報を取得するまでの探索の難しさに表現しづらい高いハードルを感じている状況を
多くのシーンで見聞きます。一方、
新しい薬を採用する時の注意事項は?
患者さんが訴える症状は薬由来のものか?
資材からは見つけられない副作用への対応は?
などなど、
医療現場において次々と対応が迫ってくる中で
エビデンスの有効活用、エビデンスベースの判断を迅速に行うことは非常に難しいことであるとの
お声も届き、ビッグデータ活用を求められる時代背景とのミスマッチングが生じているかと推察します。そんな中、医療従事者とのコミュニケーションにおいて、
「シグナル情報で関連性探索が出来るのはよいが、それが既知の情報か、
未知の有害事象でやはり気を付けなければならない症状であるのかを判別できるようになれば
探索の手間がちょっとでも省ける」
というコメントを頂き、本機能の着想となりました。医療情報データベースをもとにして
シグナル情報という判断材料がCzeekVにある中で、更に探索に貢献出来る可能性を持ったものとして
この「既報/未報(既知/未知)機能」を搭載することにしました。トップページにもあります。
■開発に際して
既報(既知)か未報(未知)かの定義は、「添付文書に記載がある副作用用語かどうか?」 としました。
添付文書に記載があれば「既に報告があり、規制に合わせて情報提供がなされるべき症状であり、
医療従事者にとっても(薬に携わるプロフェッショナルにも)既に知られている副作用である」とし、
添付文書に記載がないものは記載がないので、シンプルに未報・未知のものであるとしています。添付文書には添付文書特有の医学用語(症状や副作用名等)が記載されています。
添付文書を作成する製薬企業の独特な表現・言い回しがあったりなかったり、
そのボリュームもそうですが文書内容についてこれらをきちんと理解し、
常に準備をすすめる医療従事者、特に薬剤師さんには頭が下がる思いです。一方、SRS(FAERS・JADER)の医療情報DBには医学用語に関するターミノロジーとして
MedDRA(MedDRA/J)が採用されています。このギャップが、SRS上での報告症状が既知/未知であるのかの判断を難しくします。
そこで、ギャップを埋めるための仕組みが必要となります。
開発についてはこの仕組みづくりがキーとなりました。この“用語への対応”ということを本システムにおいて、“MedDRA用語との対応(=割当て)”、
という位置づけで開発を進めました。■まずは添付文書からの抜き出し
今年の4月から添付文書改訂がスタートし、XML作成についての新ルールが進んでいます。
新記載要領に合わせての作成が義務付けられています。
本機能開発においては、新添付文書にもそれ以前の形式にも対応しながら、
記載されている副作用(症状)用語の抜き出しが必要です。
どの項目内のどの用語が抜き出し対象であるのか、それは、機械的な操作のみでできるかなど
注意しながら進めます。また、抜き出しには用語の形態を加味します。
このプロセスも非常に重要なのですが、脇道でもあるので本稿では割愛します。■マッピング
自発報告DBに用いられる用語と、添付文書で用いられる用語において
同じことを異なる表現で記載されているものを結びつけることになります。
格好よく言うとマッピングです。
異なる表現のうち、同じことを意味しているのか、やはり異なることを指しているのかを
判断する必要があります。
それには、網羅性も考慮しつつ、
ターミノロジーが異なる添付文書とMedDRAの副作用用語を自動的に判定出来る仕組みが必要です。ここでマスタの登場です。
マスタを活用することで一致の程度を整理できます。
詳細はConfidentialなノウハウにもなるので割愛します。
(割愛ばかりですいません)■システム上での機能
「あり」、「部分一致」、「なし」の3種類としています。
例えば下記のようなイメージとなります。「完全一致」
浮動性めまい(添付文書)=浮動性めまい(副作用報告)
「部分一致」
めまい(添付文書)≒回転性めまい・浮動性めまい(副作用報告)
痙攣(添付文書)≒痙攣発作(副作用報告)
「なし」
めまい(添付文書) 副作用報告には該当がない部分一致の精度はまだまだ課題を有しているのですが、
医療従事者の目を通して確認されたゆらぎや解釈への対応をプロセスに含めて
整備されています。
また、確認すべき対象範囲であることを医療現場のユーザには説明しております。本機能を用いて、
患者さんの訴えへの対応、
処方前に起こりそうなイベントのチェックなど医療現場において活用頂いています。
製薬企業における活用方法も想像できますでしょうか?
教えて頂ければ幸いです。次回は本機能に関係する自主研究を報告したいと思います。
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