副作用用語について 〜前半〜(基本情報)
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時々、医療専門家の方から自発報告で使われている副作用(有害事象)用語について質問を受けます。
FAERS・JADERの副作用の用語は不明瞭、ある用語は臨床現場感覚とは異なるがどのような意味か?
なんでそんな用語を使っているのか?。こんな言葉をつかって(医療現場から)報告しているとは思えない。
ある時期にいきなり件数が増えているが、バイアスではないか?
(CzeekVのDB更新時シグナル検出機能を使ってみると)
前月まで0件だったのにいきなりこんなに報告が増えるの?本当?などなどです。
今回はこれらの疑問への回答が出来るよう、基本的な情報からCzeekVでの応用・解析時での注意点などを
まとめたいと思います。自発報告データベースの特性としてその細かい内容を把握しておいたほうが良い情報として
副作用用語があげられます。JADER・FAERS共に、用いられている有害事象(副作用)用語は”MedDRAのPT”です。
MedDRAとは、について簡単に下記します。
「MedDRA(Medical Dictionary for Regulatory Activities Terminology)」(メドラ)は、
ICH(医薬品規制調査国際会議)が管理体制を構築したMedDRA管理委員会によって維持管理と配布を担う機関(:MSSO)によって整備されている標準化された医学用語集です。
国際会議において、情報交換する国、企業間で異なる用語を使用すると、支障をきたするので統一された共通用語(コード)を使いましょうというのが目的です。
医薬品の販売承認前後の両フェーズで、医薬品の登録・情報管理・安全性モニタリングの全てで使用することができます。
英語版のオリジナルに加えて、多言語対応されており、日本語については日本のユーザをサポートする日本の維持管理機関(:JMO)が整備しています。
用語は半年に一度バージョンが更新されており、ユーザからの意見も反映されるようグループ年会議等も開催されています。
会議では用語の課題や改善可能性、ユーザからの指摘に応じた実装について話し合われています。
機関では理解促進のために継続的なユーザ支援活動を積極的に行っています。中身は下記のようになっています。
・SOC(器官別⼤分類)、HLGT(高位グループ語)、HLT(高位語)、PT(基本語)、LLT(下層語)という5階層構造を持つ
・ICH加盟国の日米欧は、MedDRAの用語選択考慮事項を基に「MedDRA/J」の下層語(LLT)を用語選択し、
PMDA等へ副作用報告、種々の申請データ等に使用している。これ以上詳しく書くと参照情報の域をこえて、著作権侵犯と言われそうなのでやめときます。
詳細は各種HP・セミナーなどで確認してください。世知辛い世の中なのでご容赦ください。詳しくは下記リンク先もご参考ください。
臨床現場の医療従事者の方々とお話をしていると
どうやらMedDRAの用語集(PT:基本語)に対して懐疑的な面をお持ちのようで
「どうせ会議室内だけでお偉いさんが作ったんでしょ?」という邪推が働いており、(少数派ですが)
自身の感覚と合わない言葉に対しての抵抗感が否めません。(少数ですよ)
本DB解析から得られる解釈にもその影響が大きく響いていることもあります。ここらへん、プレ◯◯ムフライ◯”ーみたいに、
お役所から推奨される制度・提案に対してはちょっと…と似たような敬遠発生ロジックがあるみたいですが、
邪推をしてしまう方や、懐疑心をお持ちの方は、
それらとは生まれが違うということを認識していただいたほうがいいかもしれません。(少数の方ですよ)とはいえ、臨床現場の感覚とは異なる用語があることも事実です。(ないようで、ある)
自発報告データベースですので
もとは医療機関・製薬企業からの有害事象報告症例の集積がベースとなっているのですが、
用語を統一する作業を要するため、そこにミスマッチが生まれる要因がありそうです。ましてや副作用症状については
育ってきた環境や医療機関の文化なども影響しそうです。
例えばある患者の訴える”めまい”については浮動性や回転性などで分けるべきかもしれません。
慢性のものか、突発性のものだったのかも考慮せずに投与後というだけで
そのクスリの影響と判断してしまう危険性もあります。
耳が原因か、脳が原因か、”めまい”一つとっても患者にとっては正確に診断してもらいたい大きな症状です。そこを”めまい”とだけ報告されても真の解析のためのデータソースにはなりえません。
患者背景をふまえて正確な報告が求められるところです。
製薬企業からの追加質問などを受けられた経験のある医療従事者の方であれば何となく理解がされやすいかと思います。そしてその用語は現時点で整理されているMedDRA用語にまとめられていくのです。
つまり、
現場の医療専門家が(ある意味)”診断”した報告される症状の用語が
(解析目的、情報共有目的のためもあって)世界共通用語に変換されており、
変換後の情報となって戻ってきた(DBが公開されて)ものを見ると、
臨床家としては「何かおかしい」との感覚にいたるわけです。
そして、どの世界共通語に変換されたのかも不明のままであったりします。痙攣などの症状もどうやら臨床医師には用語分けに不満があるようです。。。。
(特に医療従事者が)JADERや、FAERSを研究対象として解析するときには、
ここらへんの捻じれや、用語に対する基礎知識をベースとした状況把握と、
では解析のためにではどうすべきか?を意識的に検討することが大切である、
と私は常日頃感じています。また、臨床現場において、すぐに役立てようと思っても高いハードルがあるかと思いますので
そのハードルを超えるために、DBの特性や用語に対する理解は重要だと思われます。医療DBはclinicalなものがベースとなっており、一次的な目的のために、
administrativeなものとして医療行為(処方)をまとめたものがメインでした。つまり請求金額の正当性を担保できるサービスメニューを揃えるようなものです。
そのデータを二次利用として解析に用いる際には
その目的に合わせて必要な項目を再整理する必要があります。
また、そのDBに加えて有害事象情報に必要な有害事象の用語については
電子カルテや、レセコンシステムを超えたものがあります。一部大病院ではDI室が再整理に一役買って、院内からの報告に寄与しているようですが、
まだまだ浸透はしておらず、報告者ひとりひとりの技量(用語に関する知識、経験)に依存した形であり、
(報告はLLTでね、となっていますが、それを意識した臨床家は激レアだと思います)
だからこそ、報告を受け取っている当局が苦労してコーディングしているという現実があります。(参考)
一方、
添付文書にも副作用が記載されています。
医療従事者の方々はまずはこの情報を参考にするかと思います。
この用語は添付文書を編纂する各製薬企業の文化が色濃く反映されています。つまり副作用に関する用語については
医療従事者は自身が所属機関内で活用して身に染みついている用語と、
MedDRA用語と、
添付文書用語のトリプルスタンダードがあったりします。
こうなるともう大変ですよね。最近になって医療DBが研究が盛んに行われていますが、
副作用定義を症状(ICD-10)や、投与薬によって行うこともあります。
こんなところまで考えると、ますます複雑化してきそうです。それらを整理してリンクしようという活動やツールもあります。
我々も2017年度の自主研究では、副作用用語(PT)と、添付文書の副作用を網羅的にリンクさせようと試みました。ビッグデータ解析やDB研究ではよくありがちといえば、ありがちな件とも言えます。
本稿においては
まずはFAERS・JADERの副作用(有害事象)報告に用いられているPTという用語について
ご理解いただければと思います。・FAERS・JADERの用語はわかりづらい、ある用語は臨床現場の感覚とは異なるが、どのような意味か?
・こんな言葉をつかって(医療現場から)報告しているとは思えない。に対する答えは上記に書かれていますが読み解いていただけましたでしょうか?
(補足)
気になるかたは
CzeekV で 「めまい(副作用)」 で検索してみましょう。
いろんな「めまい」があることがわかります。検索に時間がかかるとしたら皆さんが検索している証拠ですので、
その場合はしばらく時間を空けてみて検索してみてください。
※トップページの検索は無料なのでどなたでも検索できます。思ったよりもここまでで結構なボリュームを割いてしまったので
この続きは次回にしたいと思います。(まとめ)
・MedDRAは国際会議で定められた共通言語
・臨床現場での報告から公開されるまでのプロセスでコーディング作業があり、変換されている。
・PTは訳がわからんといって敬遠しがちだが、辞書情報だと理解したほうが早い
(DB研究で用語の問題は必ずあるのでその整理方法を体系的に理解する)(注記)
システム上では分かりやすいように副作用と示していますが、
データベースの特性上、副作用ではなく、有害事象という定義であることをお忘れなきようお願いします。お問合わせ
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